Skip to content

「ナイター」ってホントに和製英語? - 時とともに変わる言語1

  • english

更新日📅 June 08, 2020

記事投稿日📅 March 31, 2017

⏱️3 分で読めます

英語ではナイトゲーム (night game) ということから、「ナイター」は一般的に和製英語であるとされてる。そのため、NHKでは放送する時の言語として、「ナイター」ではなく「ナイトゲーム」を採用している。これに対して、野球解説者である伊東一雄は異論を唱えていて、そこにみえる言葉の変化の歴史が面白かったのでメモ。

昔は電気野球と言われていた

 

第二次大戦前は、早大戸塚球場で早大新人対横浜商業などの試合が、夜間に行われているのを見に行ったことがあるが、そのころは「電気野球」と言われていて、もちろん「ナイター」などというカナ文字言葉はなかった。1950年(昭和25年)に東京・後楽園球場に点灯設備が整って、夜間でも常時野球が楽しめるようになるまでは、神宮球場にサンフランシスコ・シールズが来日したときや、現在の横浜スタジアムがある場所に建っていたゲーリック球場などで、時折照明が点灯されて試合が行われていたが、今とは比較にならない暗さであった。つまりナイターと言われるようになったのは、後楽園で夜間に試合が行われ始め、当時のアメリカ軍兵士たちがネット裏で歓声を上げるようになってからである。

和製英語なのではなく、英語の中で死語になった言葉?

 

ところが、日本ではこの「ナイター」が和製英語だと信じられている傾向が非常に強い。  アメリカでは「ナイトゲーム」という呼び方が一般的なのだが、かと言って「ナイター」を和製英語だと決めつけるのは早合点である。アメリカの野球関係者などと話をすると、古い人たちは「オレたちの子供のころは、ナイターと言っていたよ」と口をそろえる。つまりは今は使われなくなってしまった“死語”なのである。実はそれも正確ではなく、今でも夕方4時ごろから行われるゲームのことを「トワイ・ナイター」と言っている例もある。  いったいだれが、ナイターを和製英語などと言い触らしたのか。今となっては見当もつかないが、だいたい第二次大戦直後の日本で、ナイターなどというシャレた言葉を考え出す造語能力があったかどうか。現在の感覚だけで、判断を下すのは少々おかしいのではないか。

言葉は常に作り続けられ、時代とともに変化していく

 

ところで、「ランニング・ホームラン」という言葉があるが、これは日本人が作り出した和製英語の典型である。アメリカでは「インサイド・ザ・パーク・ホームラン」という。要するに「場内本塁打」だ。しかしこの「ランニング・ホームラン」は和製英語として傑作だと思う。一言で情景が目に浮かぶではないか!  英語ではないが「振り逃げ(たまには、見逃し逃げもあるが)」は言い得て妙。これを英語で言うと「セーフ・アット・ファースト・ベース・オン・サード・ストライク・ワイルド・ピッチ(またはパス・ボール)」と、やたらと長ったらしくなってしまう。

 

今はメジャーでは使われていないシュートやドロップも、「みんなオレたち小さいときに使っていた」というアメリカの古い野球関係者は多い。つまり和製英語ではなく、単に今は使われていないだけ。野球英語も時代とともに変わっていく。

← PrevNext →

人気の記事