知性発達学の観点からバドミントンの能力レベルを言語化。カート・フィッシャーのレベル尺度に当てはめて考えてみる
更新日📅 June 08, 2020
•記事投稿日📅 January 31, 2018
•⏱️6 分で読めます
「バドミントン(シングルス)の能力とは?」について、知性発達学の観点から言語化の思考トレーニングをしてみる。
本記事は発達心理学者のカート・フィッシャーの提唱する「ダイナミックスキル理論」を元にした思考トレーニングログである。
この言語化トレーニングの目的は、特にレベル11の理解からレベル12の理解にたどり着く行為、次元を上げて思考をすることにある(抽象化能力の鍛錬)。
目的
筆者の趣味であるバドミントンの能力を、ダイナミックスキル理論を参考に言語分解していくことで、「バドミントン能力」に対する理解レベルをさぐる。
レベル別にまずは言語化してみる
レベル9単一抽象レベル
バドミントンの能力とは、相手から点数を獲得するためのシャトルコントロールを実現する能力である。
レベル10抽象配置レベル
バドミントンの能力とは、相手から点数を獲得するためのシャトルコントロールを実現する能力であり、多様なラケットワークがそれにあたる。
レベル11抽象システムレベル - その1
バドミントンの能力とは、バドミントン競技において点数獲得を有利にするためのシャトルコントロールを実現する技術であり、その技術には、ラケットの動かし方、フットワークなどの肉体的技能以外にも相手を観察して得た情報をもとに戦略を立てる思考力や、ミスを恐れずラインギリギリを狙うか、安全なショットを狙うべきかを冷静に判断するメンタル技能等様々なものが内包されている。それぞれの技能は独立したものではない。フットワークが早いことで初めて可能になるラケットワークや戦術、その自信がもたらすラリーの安定感など、それぞれの技能は相互に影響を与えている。
レベル12単一原理レベル
頭捻ってみたがわからない。これを言語化するためには、レベル11の抽象システムレベルでの言語化が複数できないといけないのだろうか?
意識的な抽象化能力の鍛錬中に気が付いた事
- 対応している思考レベルでの言語化ができているかどうか自信がもてない。もしかしたら一周まわって下のレベルではないのか?(レベル9からスタートしてみたが実はレベル6なんじゃないか。)この問題がなぜおきるかというと、「相手から点数を獲得するためのシャトルコントロール能力」という言葉が具体的なのか抽象的なのか判断ができないから。現在の考えでは、これはレベル9にもなりうるし6にもなりうるし、12にもなりうるという事。統合化と差異化の関係、立体としてとらえるか点と捉えるかという違いなんじゃないだろうか。
- だとすると、フィッシャーが提唱する13の能力レベルのうち、レベル9以上の概念は、どこまでを点として捉えるかで定義が変わると思う。
- この思考を実践的にスキル向上に役立てるためには、思考実験する際の最初の問いかけをより具体的に必要がある。たとえば今回の場合は「バドミントンの能力とは?」→「バドミントンのハイバックショットの能力とは?」のように掘り下げる。
二度目のアプローチ、レベル12に到達するために
上記を書きなぐった後、一度仮眠を取って、全く別の言葉でレベル11相当の言語化ができないかどうかを試みてみた。
レベル11抽象システムレベル - その2
バドミントンの能力とは、返球力である。強烈なスマッシュやラインギリギリを攻める絶妙なコントロールの球がうてなくとも、理論上100%返球できれば絶対に負けないのである。返球力という能力の中には、相手の次の攻撃がどこにどうやってくるかを瞬時に判断する能力、予測力、相手の次の次のシャトルを返球しやくするための次のシャトルの捌き方とそれを可能にする物理的な身体能力が、複雑に相互作用している。
レベル11抽象システムレベル - その3
バドミントンの能力とは、ネット越しに相互に影響しあうターンベースゲームであるバドミントンの中で、規定のルール内で行われるラリーを、自分がミスするよりも先に、相手のミスを誘発させる能力である。
レベル12(単一原理レベル)を導き出すまで
2つ目のレベル11言語化を行った後、3つ目に取り掛かろうとした時にいくつかの気づきがあったのでそれをメモっておく。
- 1つ目で述べた「シャトルのコントロール能力」と2つ目で述べている「返球力」は全く同じ意味であって、ただ言葉を置換しただけで、別の「面」といえるのかというのが疑問。
- 2つ目を言語化している仮定で、「理論上100%返球できれば絶対に負けない」というのを思いつく。この言葉を入れたことによって、その1では「シャトルコントロール技術」を構成する要素として扱ってきた各技能(サブスキル)の相互作用性に、サブスキル同士の相互補完力が均等でない形で影響し合うという概念に気付かされる。
- 上記の文章時点でかなり言語化に苦しんでいる。というか若干意味不明だが、これは噛み砕いて極論をいえば、100%返球するサブスキルがあれば、相手のミスを誘発させるための強力な攻撃力がまったくなくても、バドミントンで最強になれるということである。つまり、理論上スマッシュの技能がゼロでもバドミントンでは負けないのである。相手に100%ミスを誘発させる能力と、自分が100%ミスしない能力(「矛盾」の語源のよう)では、自分が100%ミスしない能力のほうが優秀である。
- 上記の理由は、バドミントンという競技がターン性なため、100%相手をミスさせる能力をもったプレイヤーが100%勝つことは、そのプレイヤーが先行しなければならないという条件が加わるためである。
- 現実的に、100%は存在しえない。返球率が100%でなくなったときはじめて、攻撃型サブスキルや心理的、戦略的サブスキルが100%でない単純防御型サブスキルの相互補完をし、バドミントンの能力として統合的に評価されるのである。
- ネットを挟んで1つのシャトルをタイマンでやり取りし合う事を「ターン制」という言葉に落とし込むことができたところで、レベル12に到達できそうな気配が漂ってきた。
- 単純に考えれば面は2つじゃ立体を構成するには足りてないと思っていたが、3つ目を思考している地点から、立体を意識する程度のことはできるようになってくるのかもしれない。
- 複数の面を作れた時に1次元上の抽象化が発生するとして、2つ目以降の面はそれ以前に生成した面と違った性質をもっていなければならないと漠然と思っていたが、実際には後期に生成された面は既に生成された面の影響を少なからず受けているため、全く別の(90度の角度差をもつ平面)にはなりえない。抽象化とは、さまざまな面的事象を3次元内で組み立てて角ばった立方体を作っているというよりは、なめらかな曲面で構成された3次元空間内に存在する曲面を膨張させているようなイメージに近いかもしれない。そしてさまざまなベクトル方向に膨張した3次元曲面が、一定の大きさと広がりをみせ、既存面が交わったときに、立体として認識できる部分が作られることがある。この時の立体が「抽象化」の産物ということなのだろう。
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